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今夜の番組チェック

 茶色いボールが規則正しく床に叩きつけられる。
 床はその度に小気味よ音を放ち、周りのから生まれている歓声と一体化していた。
「いっけー!まもちゃん!」
「あと1ゴールで勝ち越しだよ!」
 少女らしい黄色い声が一人の少女に集中している。ショートヘアが風に揺れ、緑色の鉢巻が遅れてなびく。何よりしなやかな足の運びが他を圧倒していた。
 おまけに動きは猛々しく、迫る選手を見事に切り抜けている。
 体操着の下で揺れる微かな少女のラインなどはじめから気にしていない。
「衛ちゃん、行って!」
 すれ違いざまに同じ色の鉢巻をした少女が叫ぶ。
 その瞬間、衛はボールを持って高く飛んだ。
 そしてボールを右手に乗せ、映る目標に照準を合わせる。
 ボードの前に突き出たリング。そこにぶら下がる網。
 競技の象徴であるそこに、衛はボールを叩き込んだ。
 床にボールが力強い音を立てて落ちる。同時に会場が静まり返った。
 やがて衛が遅れて着地をする。
 歓声がよみがえったのはそれから数秒後のことであった。
「まもちゃん、カッコイイー!」
「すっご〜い!!」
 入り混じる賛美の声が一体となり衛を包む。
 その中心である衛はほっと胸を撫で下ろし、ぽつりと呟いた。
「あれでよかったんだ・・・・・・」
 ほっと、安堵の息が漏れる。
 その時、苦手な球技の一つが得意に変わったことを実感した。

 衛の活躍もあり、球技大会と称されたクラス対抗バスケットボールは大成功のうちに終わった。衛が所属するクラスの女子の部はもちろん優勝を決めた。
 閉会式が終わると、生徒たちはそのまま放課後に突入した。どうやら閉会式そのものが合同のSHRだったらしい。その途中、衛は何人の生徒にも捕まり、帰宅する時間が遅れることを余儀なくされた。
 やがて教室につき、先ほどコートですれ違った少女とまたすれ違った。
「衛ちゃん、今日はお疲れ。カッコよかったよ、またね♪」
「あ、うん。じゃね♪」
 衛は笑顔で答えた。そして自分の席に向かい、着替えに手を当てる。
「ふぅ・・・・・・」
 と、大きく息をついた。
 そして耳を澄まし、校舎の静寂を確かめる。衛は誰もいないと判断し、体操着を脱ぎ始めた。
 ささやかな胸を支えるスポーツブラが妙に健康的で色気をかき消していた。
 ガラリ
 と、ドアが開いたのは体操着が腕を抜けた時であった。
 衛は反射的に胸を押さえた。
 そこにいたのは長い髪を一本にまとめた古風な雰囲気を持つ少女であった。
「あ、あの・・・あの・・・・」
「え、ええと・・・・・・」
 互いに言葉を失う。
 衛は視線を外している隙に、一度脱いだ上着を手早く着直した。
「えっと、由利ちゃん・・・だよね・・・?」
 言われて少女は小さくうなずいた。
 その少女に、衛はかすかな覚えがあった。
 確か写真部に所属している。証拠に首からカメラをぶら下げている。だがそれ以上におとなしめの印象があった。何より存在感は無いに等しい。衛もこうして会うまですっかり忘れていた。
 そんな彼女が今更何を?
 衛は心の中で首をかしげた。
「あの、これ・・・・・・」
 と、差し出されたのは二枚の写真である。
 デジタルから生まれたものではない。それどころか店に任せたものではない手製の写真である。
 何より白黒である。それは学生の部活においては標準的なものであった。
「これって・・・もしかしてボク?」
 疑念に従って衛は訊ねた。
 そこに写るのは紛れもなく衛であった。
 だが、撮られた本人からしてみれば別人に見えるほどの写りをしていた。
 一枚目は先ほどダンクを決めた瞬間、気合が最高潮に達した衛の顔。
 二枚目はそれとは対照的に授業中、迂闊な寝顔を見せる衛。
 実に対照的であった。
 そしてその中間の顔を、今の衛はしている。
「・・・うん」
 少女がこくりと頷く。
 そう言えば、と思い出す。
 去年の今頃に授業中・・・というよりも自習中に眠っていたことを。
 どうやらその時に撮られていたらしい。
 リフレインした記憶に、衛は思わず苦笑した。
「気に入ってくれた?」
 由利は静かに訊ねた。衛は深く頷くことで答えた。
「もちろん」
 すると、由利の顔が笑顔に変わった。
 慎ましいそれに衛の頬も自然と緩む。
「じゃあ、この写真、コンクールに使っていい・・・?」
 と、やはり静かに訊ねる。
 表情とは裏腹に妙にギクシャクしていた声であった。
 衛は少し考えてから再び頷いた。
「いいよ。多分、ボクだってこと、わからないだろうし・・・・・・」
 本気の言葉だった。しかし冗談に聞こえたのだろう。由利は声を出して笑ってしまった。
 おかげでその瞬間に見せた衛の表情を撮り損なったのは言うまでもないだろう。

あとがき
 というわけで、SIS-SPORTS、バスケバージョン。
 今回はお手軽に読める雰囲気を目指しつつスポーツの秋と芸術の秋をセットでお届けしました。
 いつもと違う書き方をしたのでおなじみの方には違和感があるかもしれません;;;
 はてさて、次は・・・春歌と鈴凛が主役です、お楽しみに♪
 2004年11月某日 東牙
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