
| 『ルシエ陸士、ルシエ陸士。至急、格納庫へお願いします。繰り返します・・・』 「・・・なんだ、格納庫がキャロを呼びつけるとは・・・整備か、それとも運輸隊か?」 放送を聞いたシグナムは眉をひそめて天井を見上げた。 「キャロならオフシフトで、エリオと少し遠くに出てるみたいですよー」 と、声をかけたのはスバルである。タンクトップにハーフパンツと、極めてラフな姿であった。 「それは聞いている。だがいったい何が・・・」 『シグナム副隊長!』 鬼気迫ったような青年の声が、宙に浮いた画面と共に現れた。 「グリフィスか、どうした?」 極めて落ち着いた様子で、シグナムは訊ねた。 『報告します! フリードが・・・フリードが格納庫で暴れてます!』 「・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・」 シグナムとスバルは、思わず感情を失った。 ◇ ◇ ◇ シグナムとスバルは格納庫へ早足で駆け込んだ。 状況はすぐに見えた。 数名の濃緑ツナギを身にまとった隊員がサラブレッド並の白い竜と対峙しているのだ。 「シグナム副隊長」 様子を見守っていた隊員の1人がシグナムに気づき、頭を下げる。 「こうなった経緯はなんだ?」 「わかりません」 「被害は?」 「ケガ人が3名。うち1名が非戦闘要員です。いずれも火傷と捻挫程度ですが・・・応急処置は終了、現在、シャマルさんのところで治療中です」 「それで済んだだけで幸か不幸か・・・」 「シグナム副隊長、被害、増えそうです!」 会話を断ち切るようなスバルの叫びが轟く。 それを聞いたシグナムはすかさずフリードの方を見た。 隊員たちに対して、火球を放とうとする白竜の姿が、そこにあった。 「ちっ、緊急対応だ、スバル!」 「あ、あたしもオフなのにぃ!」 そう叫びながら、二人は変身をしつつ、隊員たちとフリードの間に割り込んだ。 「パンツァーガイスト!」 「プロテクション!」 二つの防御魔法が巨大な火球を打ち消し、激しい煙を立ち上げた。 その中から、拳を振り上げたシグナムとスバルが、フリードの頭部を目掛けて飛び込んだ。 ◇ ◇ ◇ ※あまりにもバイオレンスな一撃のため、表現を割愛させていただきます ※後にシグナムとスバルはこう語っています ※「偶然とは言え、同時に当った拳がフリードの脳を激しく揺らしたことについては深く反省している」 ※「ごめんなさい。他にやり方があったはずなんですけれど、あの場でのあたしの限界でした」 ◇ ◇ ◇ ― 数時間後、シグナムははやての執務室にいた。 「うーん、昨日はよう休めたぁ・・・シグナム、いつも交代部隊の指揮、ありがとな。そろそろヴィータにもやらせてみよかな・・・あ、なにか報告ある?」 「いえ、特に何も」 「ホンマか? いつもより髪が乱れてる気もするけど・・・」 「・・・少々スバルと共にフリードの世話に手間取っただけです、ご安心ください」 やや声をつまらせてから、 「ああ、キャロが格納庫に預けたって話やな。今度からシャマルんとこに任せろって指導しといたから安心しとき、それで丸く収まるやろ? ケガしたのも納得しとる」 はやては微笑みながら、しかし目は緩ませず、そう言った。 「・・・・・・さすがです、主」 察してくれた主の心に、シグナムは敬意の言葉と感謝の念で応えた。 その様子を扉の後ろで見ていたスバルは苦笑してた。 「大人ってアレだねぇ、ティア」 と、隣で険しい顔をしているティアナに語る。 「バカ、小さな事故が大きく上に伝わって解散とか、されたかないでしょ」 ため息まじりで、ティアナは答えた。 「ケガ人でてんのにティアも大人だねー」 「大きくしかけた要因の1人が言うセリフじゃないわね」 「うっ」 こうして表に知られることも無く決着した事件は、スバルにとって大きな社会勉強を生んだのであった。 なお、フリードが暴れた原因について語る者は誰一人としていなかった。 もどる |