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 と、いうわけで、まずは早速協力者を募ることにした。
 ところでいろいろと時間軸が合わないような気がしないでもないのだが、・・・気にしない、気にしない。
 俺、物覚え悪いもん。
 とりあえず、香里とともに何人かをリストアップしてみた。

 秋子さん
 あゆ
 舞
 佐祐理さん
 美汐
 久瀬

 ・・・あれ?
 一部に不純物が。

「冗談よ。」

 そういいながら、香里は一番下の二文字に二重線を引いた。

「それに、秋子さんに頼むのは自殺行為だと思うぞ。」
「交渉は私に任せて。残りは任せるから。」
「わかった。」

 よかった、比較的楽な人員で。
 そう思った矢先であった。
 香里が二重線の隣に再び「久瀬」の文字を書き始めたのだ。
 俺はその字を丁寧に墨で消しておいた。





 あゆは適当に街をぶらついていればぶつかるはずだ。
 鮎の釣り方としてはオトリが主流というか・・・。
 あゆの捕まえ方もまた然りだと、俺は思った。
 というわけで街に出てみたが、いかんせんかかりが悪い。
 代わりに別に人物と出会った。

「相沢さん。」

 呼びかける声が若いわりに落ち着きすぎている。
 こんな喋り方をする知人は一人しかいない。

「美汐か。」
「おはようございます。」

 美汐は丁寧にお辞儀をした。
 俺もつられて頭をたれた。

「どうなさったんです?こんな朝早くに街をうろうろ・・・さては朝の散歩ですね?」
「別にお前みたく若年寄ってわけじゃないが・・・まあ、そんなところだ。」
「まあ、ずいぶんなお言葉ですね。」

 別に火花が散るような、それでいて互いに冗談めかした言い合いであった。
 美汐もそれを承知しているのか、すぐに話題を切り替えた。

「ということは何か用事がおありで?」
「そんなところ。」

 ・・・あえて「あゆ釣り」と言わないでおこう。
 下手したら説教が始まりかねない。
 ふと、俺は出る前に書いたリストを思い出した。

「そうだ、美汐。手伝ってもらいたいことがあるんだが・・・。」
「真琴がまた何か?」
「いや、真琴は今・・・その・・・冬眠中だ。」

 ・・・あえて本当のことは言わないでおこう。
 下手をすると美汐に刺されかねない。
 ところで美汐と香里が面識があったような無いような、とりあえず言うだけ言っておこう。

「香里がちょっとした病気にかかってな、手を貸して欲しい。」
「説明不足にもほどがありますが、相沢さんの頼みとあらば、いいでしょう。」
「本当か!?」

 そっちはそっちで了承した理由が不明瞭だが。

「それで、何をすればいいのでしょう?」
「まずはメンツを集める。」
「まずは、ですね。わかりました。」

 というか、それしかわからない。
 だいたい秋子さんから詳しいことを聞いてないから。
 ・・・つーか・・・今回の事件って、人いるのか?





 釈然としない疑問を抱きながらも、俺はさらに協力者を求めた。
 残念ながら、あゆはかからなかったために脱落だ。
 というわけで、佐祐理さんちに着てみた。
 でかい、相変わらずでかいぞ、佐祐理家。

 ・・・?

「ああ、倉田家か」
「相沢さん?」
「いや、なんでもない。」
「とにかくお邪魔してみないと、話は進みませんよ。」
「もちろん。」

 何が、もちろんなのか、言った自分でもよく分からないが、とにかくインターホンを押してみた。

 ピンポーン・・・

「?」
「ずいぶんと寂しいチャイムですね。」
「もう一度、押してみようか。」

 ピンポーン・・・

「・・・なんて気力の無いことでしょうか。」
「ああ、これじゃあ近所のガキもさぞかしダッシュのしがいがないだろうな。」
「そんな酷なこと・・・ありますね。」

 どうやら美汐もピンポンダッシュの経験者らしい。

「では、押してもだめならひいてみてはいかがでしょう?」
「上手い発想だな、やってみよう。」

 というわけで、ボタンをひいてみた。

 左舷、弾幕薄いぞ!何やってんの!

「・・・気のせいかな、俺、疲れてるのかな?」
「相沢さん。後方より敵機急接近です。」
「え?」

 まさか、とバカにしながら俺は振り返った。
 するとどうだ。

パッコーン

 と、額が割れた。

「いてえ・・・」

 俺は額から流れる血を拭った。

「な、なんじゃこりゃあ!」
「・・・祐一、油断とありきたりなパターンは戦場では死に繋がる・・・。」
「舞。」

 そりゃ血も出るわ。
 でも気にしない。
 いつものことだもの。

「舞、どうしてここに?」
「・・・お庭番・・・。」
「なんで?」
「・・・佐祐理がストーカーされてるから・・・雇われた・・・。」

 ストーカーとは、おだやかじゃないな・・・。
 いや、その前に雇われたって、なに?

「で、そのストーカーって?」
「・・・『レンジで簡単怪盗クルーゼ』・・・。」
「レンジで怪盗簡単クルーゼ?」
「・・・少し違う・・・けど他のお庭番の人は・・・そう言ってる・・・。」
「クルーゼねぇ・・・。」

 というかレンジで簡単怪盗ってなんだ?

「そもそも、そんな人っていらっしゃいましたか?」

 美汐がひそひそと俺に耳打ちをしてきた。
 その時、耳に息が当たってドキドキしたとかは今更言うまでも無いだろう。
 しかし・・・クルーゼって確か別の・・・。

「祐一、もしかして佐祐理に会いに来た・・・?」
「まあ、一応は。」
「・・・佐祐理は今出かけてる・・・。」

 じゃあ、別にここでお庭番をする意味がないじゃないのか?
 いや、それよりも・・・。
 俺はふと、今朝のリストを思い出した。

「舞、手伝ってもらいたいことがあるんだが・・・。」
「・・・ダメ・・・私はお庭番をしなければならないから・・・。」
「いや、別に佐祐理さん、ここにいないわけだし・・・。」
「・・・君主の命令は絶対だから。・・・」
「お前、いつから忍者になったんだ。」
「だから、祐一・・・。・・・今回は手伝えない・・・。」
「わかった。無理言ってすまない。」

 だから早く佐祐理さんのところに行った方がいいかもしれない。
 かといって、今の舞から佐祐理さんの居場所を聞くことは出来ないだろう。
 というわけで、俺は一度、水瀬家に戻ることにした。





 戻る途中、ちょうど香里と会った。
 もしかして、交渉成功?

「あら、相沢くん。もしかして、今回のメンバーってこれだけ?」
「まあ、何と言うか・・・。」

 説明しずらい。

「そういう香里はどうだったんだ?」
「ジャムをたくさんもらったわ。」

 恐らくOKの証拠だろう。
 しかし、香里の手にジャムは無い。

「で、そのジャムはどうした?」
「妹たちにあげてきたわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「あの、相沢さん・・・?」
「相沢くん?」
「二人とも、どうやら事件は解決したみたいだ。」

 香里がその妹たちにジャムを届けた時点で、な。

「・・・しかしこの事件は見え見えの伏線に至る序章にすぎなかったのである・・・。」
「おかーさーん、声色で妙なこといって、何やってるの?」
「あら、名雪。・・・お仕事よ?」

 今夜はジャム合コン。